ギリシャの国民投票方針、市場は再び動揺:識者はこうみる
ギリシャの国民投票方針、市場は再び動揺:識者はこうみる
2011年 11月 2日 11:24 JST 記事を印刷する | ブックマーク| 1ページに表示[-] 文字サイズ [+]
1 of 1[Full Size]Top News
Greek PM wins over cabinet, next up Merkel and Sarkozy | ビデオ
FBI interested in regulatory probe of MF Global | ビデオ
World stocks, euro rise, look to Fed, G20 | ビデオ
MF Global accounts shock leaves clients scrambling | ビデオ [東京/アテネ 2日 ロイター] ギリシャのパパンドレウ首相が31日に欧州連合(EU)による第2次ギリシャ支援策受け入れの是非について国民投票を実施する意向を表明したことで、再びデフォルト(債務不履行)に追い込まれるとの懸念が高まり、金融市場が大きく動揺した。
市場関係者の見方は以下の通り。
●テールリスク高まる、リスクオン・オフの動き頻繁に
ギリシャ首相が国民投票実施を表明したことで、再びテールリスクは高まっており、市場は混乱している。そもそも欧州債務危機の回避に向けた包括合意は、まだマクロの話であり、問題解決に向けた入口の段階。個別の国ごと、あるいは金融機関の話までには及んでおらず、具体論になってくると、今回のギリシャのような話はいつ出てきてもおかしくない。想定通りだが(解決までには)何年もかかるだろう。
政治の意思決定するスピードと市場の考えているスピードとのギャップが必ずマーケットで消化されずにボラティリティを高めるということが、かなりの頻度でおきると想定される。当然、それに伴い、リスクオン・リスクオフの動きはその度に出てくるだろう。
ただ個別企業への集中投資では現在のような相場や円高もそれほど気にはならない。その企業のビジネスに対して投資できるかできないかの話だ。円高でもそれなりにリカバリーできる企業と、単純にそのまま為替の影響が出たという企業とあり、二極化は進んでいる。その中で勝てる企業に投資していく。
●リスクオフ再び、低位内需株では力不足
<みずほインベスターズ証券 エクイティ情報部長 稲泉 雄朗氏>
一巡していたリスクオフが再び強まっている。ギリシャが国民投票を実施し、欧州連合(EU)の支援策などを否決すれば、欧州の債務危機対策は一からやり直しになってしまう。市場の不安心理が端的に表れる米10年債金利は2%を割り込み、黄信号から赤信号に変わった。株式市場では今後の展開を見守ろうと買い手が引いている。国内企業業績も、タイの洪水が長引いてることや1ドル=70円台が定着したことで、輸出企業の下期回復シナリオは後退した。
一方、第3次補正予算が執行されれば内需関連株には期待できよう。財政支出で実際に資金が流れ込む建設やセメントなどのセクターには復興需要が見込める。ただ、低位株が多いため日経平均などの指数を押し上げるには力不足となりそうだ。
●欧米金融政策での対応もあり得る状況に
<三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニア投資ストラテジスト 吉越昭二氏>
ギリシャ首相が国民投票実施を表明したことで、マーケットは欧州債務危機の回避に向けた包括合意の実現性を疑問視している。ギリシャのハードランディングシナリオも出かねないだろう。今晩の欧米市場の状況次第では、米連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和第3弾(QE3)を打ち出す可能性も否定できなくなった。3日のECB理事会で利下げの可能性があるほか、週末の20カ国・地域(G20)首脳会議での対応策も予想される。政策対応があり得ると考えれば、一方的に売り込むのも難しい。祝日を控えいったんポジションをニュートラルに戻す投資家が多いのではないか。
<住友信託銀行 マーケット・ストラテジスト 瀬良礼子氏>
ギリシャがEUによる第2次支援受け入れをめぐる国民投票を実施すると表明、リスク回避地合いが強まっている。国民投票で支援受け入れが否決されれば、無秩序なデフォルトに向かう可能性が高まる。伝染リスクからイタリア国債の利回りも上昇しており、ユーロ/ドルは、1.31ドル程度まで下落する可能性が出てきた。
きょうの米連邦公開市場委員会(FOMC)では、ギリシャの国民投票による市場の混乱をにらんで、景気の下振れリスクをどこまで拡大するかに注目している。今回、量的緩和第3弾(QE3)に踏み切ることはないだろうが、プレッシャーは強まっている。
3日の欧州中銀理事会についても、利下げの可能性がこれまでより高まっている。すぐに利下げしないとしても、先行きの利下げを示唆する可能性もある。
●ギリシャ国民投票実施の可能性低い、緊縮財政策反対なら資金ショート
<大和証券キャピタル・マーケッツ シニアクレジットアナリスト 藤岡宏明氏>
ギリシャのパパンドレウ首相が10月31日に欧州連合(EU)による第2次ギリシャ支援策受け入れの是非について国民投票を実施する意向を表明したことで、ポピュリズム的なリスクが現実化することへの懸念から、マーケットに動揺が走った。しかし、与党内でも反対者が数名出ており、冷静に考えれば議会で国民投票にかけるという議案は通らないのではないか。
仮に国民投票を実施してEUの支援策が否決された場合、ギリシャは資金ショートする。公務員や年金受給者などが緊縮財政策に反対しているが、支援を受けなければ給与や年金が支払われなくなってしまう。資本注入してもらおうとしているギリシャの銀行も破綻に追い込まれる。残念ながら、国民投票を行う余裕はなく、ギリシャは支援を受ける選択肢しか残っていない。
●投資家冷静、長期金利コアレンジ0.95─1.1%
<SMBC日興証券 チーフ債券ストラテジスト 野村真司氏>
時間をかけて前週の欧州首脳会議で包括策について合意したが、ギリシャのパパンドレウ首相が欧州連合(EU)などの支援の是非について国民投票を実施すると表明したことで、債務危機対策が振り出しに戻りかねない懸念が出ている。きょうの市場はリスクオフとなり、債券が買われている。
ただ、ギリシャの問題がすぐに解決すると思っている市場参加者はほとんどいない。さらに、ギリシャは不安定だが、20カ国・地域(G20)首脳会議などである程度政治が対応していくとみている。9月までは政治に対する不信感が強かったが、今は違うと受け止めている。円債金利に関しては、10月上旬が分水嶺だったような気がする。
10年最長期国債利回り(長期金利)の1%前後には高値警戒感がある。これまでの学習効果もあって、投資家は冷静に対応し、1%割れを積極的に買う動きが少ないのが現状だ。基本的には0.950─1.100%がコアレンジとみている。
© Thomson Reuters 2011 All rights reserved.